親権をどちらが持つか決めたら、次に親権を持たない方の親から養育費をもらうための話し合いが必要になります。
ここでは、養育費の相場を決める基準と、養育費を受け取れる期間について解説します。
養育費に含まれるものとは
離婚すると、親権者又は監護者が子を引き取り育てることになりますが、子供の養育には様々な費用がかかります。
このため、親権者又は監護者ではない方の親は、相手方に対して養育費を支払う必要があります。
ただし、養育費は子のための費用であるため、親の生活費を補うものではありません。
子にかかる費用として主なものとしては、衣食住にまつわる費用や教育費等が挙げられ、いずれも子が成人してひとり立ちするまでに必要な金銭となります。
どこまでの範囲を養育費として認めるかは個々の事情により変わってきます。
養育費の算定基準
養育費は一律いくらと決まっているわけではなく、親と子の諸条件から基準となる金額を導き出し、個々の事情を踏まえて調整されます。
目安としては裁判所による算定表が使われています。
親権者の年収と支払う側の年収
親権者の年収が低く支払う側の年収が高いほど両者の差は大きくなるため、受け取れる養育費は多くなりやすいと言えます。
子の年齢や兄弟姉妹の数
子供は幼い頃に比べ、年齢が上がるほど教育費用がかかります。
具体的には、高校受験までの14歳に至るまでの間と、高校受験から大学進学に至る15歳以上とでは必要な教育費用は大きく変化するため、15歳以上の子を持つ場合は養育費が高額となる傾向があり、兄弟姉妹がいる場合はその人数分だけ請求することができます。
養育費が増減される可能性と受け取れる期間
養育費は子がひとり立ちするまでの費用を補うものですから、一般的には20歳を1つの目安としています。
子が高卒で就職することが考えられる場合は18歳までとするケースもあります。
また、親が大卒である場合や本人が大学進学を望む場合等は、高確率で進学が想定されることから、親と同程度の教育を受けさせるために、大学卒業時である22歳までの費用を含むことがあります。
ことに近時は大学全入時代と言われるほど大学進学率が高いため、22歳まで認められることが多いです。
しかし、支払う側が解雇されたり転職したりする等して年収に極端な変化があった場合、従来通りの養育費を支払うと本人の生活が困窮するか成り立たなくなると認められれば、養育費が減額されることがあります。
また、支払う側が再婚し子供ができた場合も、扶養すべき家族が増え支出が大きくなることから、養育費減額の理由とされる場合もあります。
どのような時に減額が認められるかは個々のケースで変わりますが、裁判所が減額相当と判断するほどの事情が必要になります。
さらに、支払われる側が再婚し、再婚相手と子が養子縁組するなどして、子の養育義務を負う者が増えれば、それだけ一人あたりの分担額が減るわけですから、それまで支払っていた養育費の減額が認められることになります。
なお、養育費は夫婦間の協議によって修正可能とされていますので、子の進学状況が変わり教育費用が多くかかりそうであれば、相手方とよく話し合って金額を調整していきます。
夫婦の話し合いで決まらなかったり増額の相談に応じてもらえなかったりする場合は、裁判所に養育費増額調停を申し立て、調停委員を介して適正金額への調整を試みることもできます。
養育費が途中で支払われなくなった時の対処
離婚の際に取り決めた養育費の支払いが滞るケースが非常によく見られます。
相手方にやむを得ない事情があり、こちら側もそれを納得し了承していれば問題ありませんが、一方的な理由で養育費を送ってこなくなったり突如として送金が止まったりした場合、離婚時にどのような手段を採ったかによって対処法が変わります。
調停離婚や裁判離婚の場合、離婚成立の際に調停調書や判決書が作成されており、そこに養育費等の取り決めも記載されています。
養育費の定めが調停でなされた場合は、家庭裁判所に履行勧告をしてもらうようお願いをすることができます。
家庭裁判所は適宜、電話や書面で養育費を支払うよう、支払い義務者に勧告をしてくれます。
これにより、支払いが再開されると言うこともなくはありません。
しかし、それでも支払いが再開されない場合は、調停調書や判決書は執行力があるため、強制執行による差し押さえをすることになります。
協議離婚でも離婚協議書を公正証書化している場合は強制執行することができますが、公正証書化していない場合は、裁判所に養育費に関する調停を申し立てます。
困難を伴いやすい養育費の問題は弁護士が介入するとうまく行く
本人同士で養育費の取り決めを行うと、離婚成立を急いだために相場より低い養育費で合意してしまったり、養育費の取り決め自体を省略したりすることも出てきます。
一度決定した取り決め事項については、調停で話し合って変更することはできるものの、手間や労力、精神的負担が再びかかることになり、また変更が認められるだけの相応の事情も必要になってきます。
弁護士がいれば、養育費がいくらあれば生活費が不足なく補われるか、という点を基準として、それを下回ることがないように相手方と交渉することができます。
相手方が支払いを拒否したり、算定表よりも低額な金額を主張してきたりしても、正当な反論を展開することが可能になります。
弁護士が入ることで、養育費について泣き寝入りする必要がなくなるのです。
養育費問題の解決には、法的知識や裁判所の考え方を熟知している必要がありますから、ぜひ一度当事務所弁護士までご相談頂くことをお勧めします。