配偶者から突然、離婚したいと言われたものの、自分自身は離婚を全く考えておらず、何とかして離婚を回避したいと考える人も少なくありません。

ここでは、離婚を考える配偶者への対応の注意点や、自分でも行うことができる裁判所の利用について解説します。

冷静さを保ち、感情的な対応をしない

離婚を切り出す配偶者としても、相当な期間に渡り様々なことを考え、その結果として離婚という結論を出しています。

それを頭ごなしに否定するとお互いに冷静さを忘れ、感情的な言い合いに発展する可能性があります。

争いになると離婚回避は難しくなりますから、以下の点に気をつけて話し合いに臨んでみることが大切です。

感情的にならない、暴力を振るわない

冷静さを保ち、感情的になることは避けましょう

また、感情にまかせて手を上げる等ということはないようにしてください。

離婚したいと言う相手に対し暴力を振るっても考えが変わるわけではありませんし、それが万が一怪我をもたらすようなものになってしまった場合は、それが離婚原因とされてしまい、離婚が認めやすくなってしまうことにもなりかねません。

喧嘩にならないよう十分に気をつける

感情的にならないということと少し被りますが、離婚問題の話し合いは、口論に発展することが珍しくありません。

売り言葉に買い言葉とならないよう、やはり聞く姿勢を忘れないことが大切です。

いずれも、相手の言い分に耳を傾けることで、自分が気付かなかった言動や行動を直せる可能性も見えてきますし、相手が何を考えていたのかがわかれば、裁判所を利用した話し合いの場でも筋道を立てて交渉することもできます。

最も避けたいのは別居に応じることで、冷静になるため等と前提したとしても、別居期間が長期化するほど結果として離婚は認められやすくなりますから、離婚を回避したい場合は安易に別居しないよう気をつけるべきでしょう。

相手の言い分をよく聞く

離婚したくない側としては、相手の言い分が理解できず反論したり否定したりしたくなりますが、相手が自分に対して何を不満としていたかをしっかりと聞く姿勢が必要です。

「子供のためにも離婚しない」は効果がない

離婚を申し出る相手は、子供の存在を十分に考慮した上で、それでも離婚を選んでいる状態です。

そのため、子供がいることに訴えかけても、相手の気持ちが変化することはまずありません。

円満調停で客観的に話し合いを行う

裁判所の円満調停を利用し、調停委員を介して夫婦関係の維持と改善について話し合うことができます。

申し立てを行うと、月1回程度、裁判所に呼ばれ、調停委員を通じて話し合います

調停委員は夫婦それぞれの言い分を聞いた上で、それを各々相手方に伝え、離婚を考える原因となったことが何か、どうすれば問題を解決して円満な夫婦関係を取り戻すことができるか、助言を行ってくれます。

申し立て書類

  • 夫婦関係等調整調停申立書とその写し
  • 夫婦の戸籍について全部事項証明書

申立て先

  • 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所

費用

  • 収入印紙1200円分と裁判所が指定する郵便切手代

調停は第三者を介した話し合いの場ですから、冷静に話せなかった夫婦でも調停では落ち着いて相手のことを考える余裕が生まれることもあります。

先に離婚届の不受理申出書を提出しておくことも大事

離婚を切り出した配偶者が一刻も早く離婚したいと思っている場合、話し合いの合意を待たず、独断で離婚届を提出することがあります。

そうした事態を回避するために、予め役所に対し離婚届の不受理申出書を出しておくことも大切です。

不受理申出書を提出しておくと、配偶者が一方的に離婚届を出したとしても役所が受け付けませんので、想定外の離婚成立を防ぐ効果があります。

自分の側に法定離婚事由がある場合は離婚が認められる

自分が「法定離婚事由」に該当する行為を行っていた場合は、離婚が認められることになります。

配偶者以外の異性と性交渉を持つ不貞行為、同居を拒み生活費を入れない悪意の遺棄、性的不一致やDV等による婚姻を継続しがたい重大な理由が自分の側にある場合、法律により離婚要求を受け入れざるを得ず、裁判で争ったとしても相手方の勝訴となります

裁判離婚を回避できた後の夫婦関係

夫婦のうち片方が離婚を望み、もう片方が離婚したくないという夫婦が裁判を行い、離婚が認められないことを意味する請求棄却の判決が出されることになります。

離婚したくない側としては、これで離婚を回避することができるのですが、現実問題として、夫婦関係がそれで円満になるのかどうかを考えておく必要があります。

一旦争いを経験した夫婦が元通りになることは非常に困難ですし、精神的な結びつきはすでに破綻していることも考えられます。

さらに別居している場合は、事実上、婚姻生活の破綻を意味するため、将来的に再び離婚裁判となった時には、離婚が認められてしまう可能性もあります。

こういった現実をよく考えて、離婚したくない気持ちだけで訴訟にまで至るのではなく、できるだけ弁護士を入れて冷静かつ客観的な話し合いに努め、円満な夫婦関係を阻害する問題点を1つ1つ具体的に解決していくことがとても大切です。

当事務所としては、離婚問題が誰にでも気軽に相談できるものではないことを踏まえ、当事者の話によく耳を傾け、その上で法的な解決策を提案していくよう努めています

離婚を望む場合も、離婚回避を望む場合も、法という側面から客観的に助言を行っていきますので、一人で抱えることなく、ぜひお気軽にご相談頂けることをお待ちしています。

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