未成年の子がいる夫婦は親権者を決めなければ離婚できませんが、親権や監護権をめぐって争いになることも少なくありません。

ここでは、親権と監護権の違いや決定要素について解説します。

親権と監護権を分ける理由

未成年の子がいる夫婦が離婚する場合、どちらを親権者とするか決定しなければ離婚手続きに進むことはできません。

親権はその性質から以下の3種類に分けることができ、通常はこれら全てについて一人の親が子のために権利を実行していくことになります。

  • 子供の世話や教育、しつけを行う身上監護権
  • 子の代わりに契約事を行う法定代理権
  • 子供の預貯金等を管理する財産管理権

一般的には、女性が出産以降の育児の大半を担っていることや、幼少期には母親の存在が重要視されることから、訴訟に至った場合も親権者を母親とすることが多いと言えます。

しかし、男性側が親権に固執する場合もあるため、どうしても決まらない場合の策として、親権者を父親に、実際に子を育てる監護者を母親に指定するケースもあります。

親権を手放すと親ではなくなるような喪失感を味わう可能性もありますが、実際に重要なのは子を自分のもとで育てることであり、名より実を取る方法として監護権を利用することができるのです。

この方法で父親を親権者、母親を監護者とした場合、長期間その状態を継続することで常態化し、親権問題が落ち着くことがあります。

調査官による子の面談

夫婦による話し合いで親権者が決まらない場合は、離婚調停や審判、裁判による解決を目指すことになります。

調停委員を介して夫婦の話し合いが進められる一方、未成年の子の精神的影響や生活の安定度、周囲の環境等を確認するために、家庭裁判所調査官が家庭訪問を行い、子と面談して、両親との関係性や現在の気持ちを十分に聞き取ります。

また、子が暮らすに十分な住宅環境があるか、学校や近所との協力関係はどうなっているか等、客観的に調査を行います。

子どもの意見聴取

満15歳以上の子がいる場合は、親の離婚や生活環境の変化等について、裁判所は子の意見を聞かなければいけません

15歳未満の子に対しても、調査官が質問内容を工夫しながら本人の意見や感情を聞き取ります。

子の年齢と兄弟姉妹

まだ子が複数いる場合、兄弟姉妹は一緒に育てられるのが望ましいと考えられることが一般的です。

子の適応状況

離婚すれば別地域の学校へ転校する可能性もあるため、これまで通っていた学校や仲良くしていた友人から離れることについて、その適応状況を観察します。

また、すでに別居している場合は、新しく転入した学校やクラスメートとの馴染み具合、引っ越した家での生活順応、地域や学校に対する適応状況が注意深く観察されます

親権者として判断されるポイント

このような調査状況を踏まえ、調停や審判、裁判では親権者を決めるにあたって以下のような事情を見ているようです。

継続的に養育しているのは誰か

親権の問題は何より、子供の生活や精神状況の安定が失われないかどうかが大きなポイントになってきます。

継続的に養育をしている親に引き続き親権をゆだねることは、子供の生活や精神状況に変化をもたらさないことから、継続的に養育をしている親が有利になってきます。

実務ではこの点が最も重要視されていると思われます。

養育する親が経済的中見出し:精神的に安定しているか

子を育てていくためには、親が経済的・精神的に不安定な状況では十分な環境を保持しているとは言えません。

従って、親が定職に就き十分な収入を得る環境にあるか、家族からの支援を受けられるかといった点も考慮されます。

親と子が一緒にいる時間を十分持てるか

親は子を育てるために就労する必要がありますが、同時に子とともに過ごす時間も十分確保し、養育環境をしっかりと整えなければなりません。

祖父母等と同居している場合でも、親である自分と子の時間が十分取れる状態かが重要です。

子のこれまでの養育環境と今後の養育環境

すでに別居している場合、現在の生活状況において子が安定して暮らしていると判断されれば、有利な判断材料となります。

同様に、離婚が成立した将来についても、子の安定した生活のためにどのような工夫を行い、また実行しているかをアピールすることが大切です。

なぜ親権者は母親有利と言われるのか

訴訟に至ったケースでは、そのほとんどが母親を親権者として子を引き取っているとされています。

裁判所の考え方として、親権者は母親に有利な傾向があり、それは以下のような理由に基づきます。

継続的に養育している親は母親である場合が多い

継続的に養育している親に引き続き養育を続けさせるのが、子供の状態に変化をもたらすことが少なくて済むと判断され、親権を委ねられやすいのですが、社会状況の変化に伴い、変化は見られるものの、未だに子供を主として養育しているの父親より母親の方が多く、そのため、母親優位という判断がされやすくなっています

幼い子の養育には母親の存在が不可欠と考えられる

子育てには母性も父性も必要とされていますが、幼少期から少年期にかけてはまだ精神的に母親に依存する面が強く、母親からの愛情が十分に必要な時期であると考えられており、母性の方が優先すると考えられています。

子供自身が母親を選ぶ

子にとっては父母いずれも大好きな親であることに変わりありませんが、母親から生まれその保護を受けながら成長する中で、子としても母親の存在が非常に大きなものになり、母親を選ぶことが多々あります。

こじれやすい親権問題は弁護士を立てるのがベスト

親権問題は、大切な子をどちらが育てるか非常に重要なテーマであるため、夫婦間の話し合いはこじれやすい傾向にあります。

弁護士を立てれば、親権問題について見通しを立てて交渉あるいは調停等に臨むことができますし、養育費を決める上でも、基準となる金額から適正額を算出し相手方に請求することも可能です

離婚後の生活を想定し、どれくらいあれば足りるかという点をベースにして、それを下回ることのないよう交渉を進められます。

一人だけで抱えるには非常にストレスの大きい問題でもあるため、ぜひ当事務所弁護士までご相談頂き、ともに解決を目指しましょう。

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