別居しながら離婚協議や調停、裁判を行っている最中でも、離婚が成立しないうちは法的に夫婦です。

夫婦は生活において助け合う義務を持つことから、相手方に対して生活費の分担を求めることができます。

これを婚姻費用分担請求と言います。

ここでは、婚姻費用の基礎知識と請求方法について解説します。

別居した夫婦にも生活費分担の義務がある

夫婦は経済的に協力しながら生活を営む義務があり、それは別居したとしても変わりません。

離婚が成立するまでの間も、婚姻費用として配偶者に対し生活費の一部を負担するよう求めることができます

婚姻費用の分担請求は、収入の少ない方が多い方に対して行うものであるため、例えば子を連れて別居した妻が自分より収入の多い夫に対して請求を行うことが可能です。

請求された方は、別居したことを理由に支払いを拒むことはできません

婚姻費用の相場はいくらか

婚姻費用は任意で決めることができるため、夫婦で話し合った上でお互いに合意すれば、その金額を月々支払うよう請求することができます。

ただし、一般的には、話し合いだけで適正な金額を決めることは難しいことから、裁判所による算定表を用いて目安となる金額を基準とすることになります。

算定表は夫婦それぞれの年収から適正とされる金額帯がわかる仕組みになっており、例えば15歳未満の子がおり、夫の年収が400万円で妻の年収が200万円の場合は、4万円から6万円が相当であることがわかります。

婚姻費用を請求する側が有責配偶者の場合

例えば、子を連れて別居した妻に不貞行為の疑いがある場合でも、妻は婚姻費用を請求することができます

妻が自らの不貞行為を認めている場合は、婚姻費用の請求が認められないか制限されることがありますが、破綻の原因が夫にも存在する可能性や、子の有無、妻側の生活困窮等の諸状況によっては、個々の事情が考慮され金額が決定されることがあります。

また、未成年の子を養育している場合は、親が有責かどうかに関わらず、養育費相当分の支払いを求めることが可能です。

婚姻費用をもらえるのは請求した時から離婚するか同居するまで

裁判所の判断傾向としては、婚姻費用分担請求を行った時点から権利が発生し、離婚が成立して夫婦の相互扶助義務が解消されるか再び同居に至るまで継続するとしています。

同居中の夫婦であっても、例えば夫が自分の収入を妻に渡さない場合は、婚姻費用を請求することができるとしています。

また、請求を行う前から別居していた場合については、権利の発生が請求時からであるため、過去の分を遡って請求することは、相手がその分を支払う旨合意しない限り、できません。

従って、別居に至った場合はできるだけ速やかに婚姻費用分担請求を行い、生活費の一部を確保することが重要です。

夫婦間の交渉で婚姻費用が決まらない場合は調停で解決する

夫婦間の話し合いではどうしても解決しない場合、婚姻費用分担請求調停を申し立てることにより、調停委員を介した交渉を行うことができます。

調停委員は双方の話を聞いた後、互いの主張を相手に伝え、婚姻費用算定表をもとにした金額の提案を行います。

これをもとにお互い歩み寄り、最終的な金額を決めることになります。

調停で合意に至ると調停調書が作成され、以降は記載の内容に従って相手方は婚姻費用を支払うことになりますが、もし支払いの遅滞や拒否があったとしても、調停調書があれば、強制執行を行う等して婚姻費用を確保することができます

それでも解決しない場合、審判により金額が決定されます。

ただし、算定表の金額はあくまでも目安であるため、夫婦の年収に加えて子の人数や子の年齢等が考慮され、調整された金額が算出されることになります。

婚姻費用分担請求については当事務所へご相談を

離婚に向け、夫より収入の低い妻が子を連れて別居する場合、できるだけ生活拠点を実家とし生活費負担が軽くなるよう、当事務所ではアドバイスしています。

また、賃貸アパートを借りて住むことも問題ありませんが、家賃等の支出を考え、もらえる婚姻費用の目安から想定される生活費を計算し、現実的に生活が可能かどうか確認します。

先を見越した別居計画を立てなければ、婚姻費用をもらったとしても生活が苦しくなる可能性があるため、できるだけ別居によるリスクをお伝えし、その上で法的なサポートをさせて頂くよう努めております

弁護士であれば将来的な見立てに基づくアドバイスが可能ですので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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