配偶者が子を連れて別居している場合、自分の方の収入が多ければ相手に対して婚姻費用を支払う必要があります。
一般的に、裁判所による算定表を基準として金額が決められますが、負担する側としては決して少ない金額ではなく、生活を圧迫することがあります。
ここでは、少しでも負担を軽くするために、相手に支払う婚姻費用を減額する方法について解説します。
相手方から法外な請求を受けた場合は調停を行う
別居中の配偶者から、あまりにも高額な婚姻費用を求められて大きく困惑することがあります。
月々の費用以外にも、ボーナス時の増額や家の改装費用、日用品の購入費用など際限なく請求されるケースも存在します。
多くの場合、それに応えるだけの資力もなく、また、あまりにも高額すぎるため、自分自身の生活が圧迫されることもあります。
そのような場合は婚姻費用分担調停を申し立て、きちんと話し合うことが重要です。
調停では調停委員が介入するため、相手方と顔を合わせて話し合うことがなく、調停委員から裁判所基準の目安額が相手に伝えられ、適正額に修正されやすくなります。
学費負担は原則として公立学校が対象
子とともに別居する相手方から、子の養育費についても請求を受けることがありますが、婚姻費用は公立学校の学費を考慮した金額となるため、別途支払いに応じる必要はありません。
私立学校に通わせる場合、公立学校よりも学費が高額になる傾向がありますが、私立学校への進学について同意していない限り、婚姻費用を増額したり養育費を別途支払ったりしなくても良いとされています。
私立学校への進学は実際に子を監護する相手方の任意で決めたことであるため、一般的にはこの場合の学費は相手方が負担すべきという考え方になります。
収入が激変した場合は減額理由として認められることがある
婚姻費用や養育費は、夫婦の別居時点における年収を基準として決められます。
しかし、将来に渡り双方の経済状況が変化する可能性があるため、どうしてもやむを得ない事情がある場合は減額の希望を申し出ることができます。
ただし、些細な変化による減額希望を一つ一つ認めていては、夫婦双方の生活が安定しなくなってしまいますから、裁判所としてはよほどの事情がない限り安易な変更は認めない傾向があると言えます。
裁判所が認める事情とは、支払者の収入が激減しその生活に困窮している場合や、解雇され失業した場合等が該当します。
ただし失業の場合は、再就職すればまた収入を得られるようになるため、一時的な減額が認められるに留まる可能性があります。
その他、当初当事者間で定めた婚姻費用が法外な金額であった場合も認められることがあるでしょう。
支払者が住宅ローンや家賃を負担している場合
同居していた家から相手方が別居して賃貸住宅に住むようになった場合、住宅ローンの支払いと相手方の家賃の支払いを両方負担しているケースがあります。
このような場合は、住宅に関する支払いが資産形成に繋がるかどうかで判断されます。
住宅ローンを支払って完済すれば、その家は支払者にとって財産となりますから、ローン分全てを婚姻費用から減額することは適切とは言えません。
ただし、住宅ローンと家賃を二重に支払うことは、経済的に大きな負担となることは間違いありません。
裁判所の考え方としては、住宅ローン返済額を全額控除することはないものの、夫婦の年収を考慮した上で一定程度の金額を差し引いた額を婚姻費用とする傾向があります。
また、支払者が、相手方が住む住宅の家賃を負担している場合は、家賃を支払うことで支払者の財産形成に繋がるわけではなく、あくまでも相手方の生活費の一部を負担していることになるため、家賃分が控除された金額に調整されることがあります。
婚姻費用の減額問題は法的知識を持つ弁護士に相談を
適正な婚姻費用とは、裁判所による基準をベースにして調整された金額になりますから、婚姻費用算定表や過去の判例等を参考にし、個々の事情を踏まえて算出する必要があります。
相手方に言われるまま多額の婚姻費用に合意した場合、裁判所としては相当の理由がない限り、後の減額変更を簡単には認めない傾向にありますから、結局は自分の経済状況を圧迫してしまうことに繋がりかねません。
相場以上に高額な費用を請求されている場合もあれば、駆け引きなしの正当な金額を請求されている場合もありますが、一般的には、請求された額が適正か判断がつきにくいものだと言えます。
このため、婚姻費用の取り決めを行う前には、予め弁護士に相談し、法的な考え方に基づく金額の算定を依頼することが大切です。
また、婚姻費用は夫婦間で任意に取り決めることができるものの、離婚問題を抱える夫婦間では冷静な話し合いが難しい面もあります。
弁護士を代理人として立てれば、弁護士が依頼者に代わって粛々と交渉に臨みますので、最終的には適正な金額に収まりやすくなります。
過度な金銭的負担をできるだけ軽減するためにも、まずは当事務所までご相談ください。