離婚にあたっては親権や財産分与など、法的な問題をいくつもクリアしなければいけません。
さらに当人同士の感情的な軋轢もあるため、できるだけ自分の考えを整理し、目的を明確にした上で準備を進める必要があります。
ここでは、離婚の事前準備と当事務所の経験に基づく対応方針について解説します。
離婚したい理由を再確認しておく
様々な思いが長年に渡り蓄積された結果、離婚という結論に至ることが多いため、事実を整理し動機付けをしっかりと明確にしておくことが大事です。
配偶者に法定離婚事由があるならどれが該当するのか、該当する事由がある場合は証拠を用意し客観的に証明できるよう備えておかなければなりません。
配偶者の電話やメール、LINEの履歴をコピーしたり、ICレコーダーを使って本人の話を記録しておくことも役に立つことがあります。
場合によっては探偵を雇うことも必要になってくるでしょう。
どうしても自分の中に積み重なった想いを整理することが難しく、明確な離婚事由を挙げることができない場合、当事務所としては、性格の不一致だけでは離婚は認められにくいことを依頼者に伝え、現実的な見通しを説明するようにしています。
また、相手方が離婚を拒む理由を見つけてもらうよう勧めており、それがお金の問題であれば金銭的援助を約束して離婚の話を進める余地が出てきますが、相手方が愛情を理由とし夫婦としてやり直すことを望んでいる場合、調停でも話がまとまる確率は低く、訴訟を起こしても離婚事由が明確でないため認められる可能性が低くなることもきちんとお話しします。
自分と相手の両方について、離婚を望む理由と拒む理由をはっきりさせ、取り得る対策や有利不利を問わず正確な情報を伝えるよう心がけることで、依頼者に判断材料を提供することが最も重要だと考えています。
離婚の話し合いをスムーズに進めるには
当事務所の経験から言えば、相手方から離婚の意思を引き出すことができれば、離婚協議をスムーズかつ有利に進められる傾向があります。
こちらだけが離婚を強く希望している場合、離婚条件の決定権が相手方に依存しやすく、あまり良い条件で離婚を成立させることができません。
しかし、相手から先に離婚の意思を明確にしてきた場合、主導権はこちらに移るため、離婚協議でも調停でも自分に有利な条件を提示して離婚を成立させることが可能になります。
例えばすでに別居している夫婦の場合、妻が夫に対して婚姻費用の請求をすることができますが、すでに離れて暮らし、夫婦の実態がないにも関わらず、愛情関係にない相手のためにお金を払う行為に夫が疑問を感じることがあります。
そこから夫による離婚提案につながり、スムーズかつ有利に離婚を成立させることができる場合もなくはありません。
譲れない離婚条件を明確にしておく
離婚において絶対に譲れない条件を明確にしておくことが大事です。
これにより離婚の目的がはっきりするため、準備行動や将来予測も立てやすくなります。
親権
子供の親権だけは絶対に譲れない、というケースは多々ありますが、父母のうちどちらを親権者とするか、法的には特有の判断基準があります。
ですからこういった場合は特に弁護士の力を借り、親権者としての自分の位置をより強固にするよう努めることが大切です。
また、親権者とならない方の親も、面会交流の機会を必ず取り決めるよう希望すべきで、当事務所の場合では最低月1回の面会交流を設定するよう配慮しています。
離婚を拒む理由が、「子供と会えなくなる」という不安や心配にあるような場合は、このような配慮をすることで相手方に安心してもらい、離婚を受け容れてもらいやすくすることができます。
離婚は子供の心情にも大きな影響を与えます。
双方の親から愛情を継続的に注いでもらえるという状況を確保することは、子供の健全な育成のために、必要不可欠です。
そうした観点からも、面会交流については積極的に設定するようにお勧めしています。
慰謝料や婚姻費用
配偶者の不貞行為やDV等によって自分が受けた精神的苦痛に対しては、慰謝料を請求することができます。
また、夫婦間には扶養義務があることから、別居から離婚に至る場合でも、その間の生活費を相手方に請求し支払いを受けることができます。
金額は家庭裁判所の定める基準に基づいて決まります。
なお、いずれのケースでも支払いを受ける側にった場合、いくらくらいの金額が妥当かを事前に計算しておき、それを下回らないよう交渉を行い、相手方が支払いを拒んだ場合は争うことも視野に入れておく必要があります。
離婚後の生活設計と子供の養育環境
離婚交渉から離婚後に向けての生活では、衣食住や子供の養育等、あらゆることを一人でこなしていかなければなりません。
先立つものをしっかり確保しておくことは大変重要ですから、養育費や財産分与等について、弁護士を入れてしっかりと請求できるようにしておき、また一人親が受けられる助成についても予め確認しておく必要があります。
養育費
一般的には、子が成年に達するまでの間、養育費を受け取ることができます。
裁判所による養育費算定表に基づいて速やかに請求できるよう準備しておくことが大切です。
養育費については、公正証書として残しておくと、相手方が支払わなくなった場合に相手の給与を差し押さえるなどの手段を執りやすくなりますので、公正証書化することをお勧めします。
財産分与
離婚に際し、夫婦はそれまで共同して築き上げてきた財産を分け合うことになります。
これを財産分与と呼びます。
割合は原則として2分の1ずつとなり、不動産や預貯金、車等、婚姻中に得た財産はあらゆるものが対象となります。
児童扶養手当
18歳までの子を持つ母子家庭あるいは父子家庭に対し、国は児童扶養手当を支給しています。
金額は所得により変わりますが、子が1人であれば全額支給で41,020円、一部支給では所得に応じてそれ以下の金額が支給されます。
子が2人の場合は子1人分に5,000円プラスされて支払われます。
生活を支える大事なお金になりますので、離婚後は速やかに申請できるよう準備しておきます。
離婚問題は早い段階から弁護士に相談しておくとスムーズ
当事務所が依頼を受けた場合、財産分与や慰謝料請求に関しては、できるだけ依頼者の利益を最大化できるように努めています。
ただし、相手方も弁護士をつけてきた場合、話し合って妥当な金額を調整していくことになります。
また、子を持つ夫婦の場合、離婚後に子供を相手方に会わせたくないと希望する人もいますが、面会交流はお子さんが両方の親から見守ってもらっているという精神的な安定を得るためにも重要なものであることから、定期的に会わせた方が良いことをしっかりと説明するよう心がけています。
依頼者が離婚において何を最も重視しているかにより、弁護士としても提案できる方向性やアドバイスは変わりますが、あくまでも依頼者の利益となるよう最大限の配慮と努力を行っており、法的な面から意図を実現に向けたサポートを行うことが弁護士の役目であると考えています。
離婚問題は誰にでも気軽に相談できることではなく、また内容も深刻になりやすいため、当事者が一人で抱え込んでしまうことが少なくありません。
当事務所では、できる限り依頼者の話に耳を傾け、事情をよく把握した上で法律的な解決方法を提示していきますので、精神的負担を減らし、具体的な将来イメージを描くためにも、ぜひご相談頂けることをお待ちしています。