不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、「夫婦関係はすでに破綻していると聞いていたのに」「金額が法外すぎる」等と混乱し慌ててしまいがちです。
不倫慰謝料問題はデリケートな面もあることから、努めて冷静を保ち、適切な対応を行うことが求められます。
ここでは、慰謝料を請求された時の対処方法や減額要素について解説します。
相手から内容証明郵便が届く場合と訴状が届く場合がある
慰謝料を請求された事実は、不倫相手の配偶者から内容証明郵便または訴状が届いて知ることが多々あります。
特に、差出人が弁護士の名前であれば、相手は弁護士を代理人に立てていることが確実です。
弁護士名で内容証明郵便が届いた場合、以降は相手方弁護士と交渉により慰謝料について取り決めることになり、弁護士名で訴状が届いた場合は、法廷で代理人弁護士を相手に闘うことになります。
弁護士がついている場合、不倫の証拠は確保されている可能性が高く、また法律と交渉のプロであることから、自分ひとりで交渉に臨めば不利な結果に至ることも想定しなければなりません。
このため、相手方に弁護士がついていることがわかったら、こちら側もすぐに弁護士に相談し同じ土俵で交渉できる環境を整えることが大切です。
請求金額が適正かわからない場合や法外と思われる場合は安易に応じない
不倫の事実によって相手方は、激しい怒りを抱いていたり大きなショックを受けたりしていることが考えられます。
そのような怒りやつらさをぶつけるように、相手方は高額な慰謝料を請求してくることがあるのです。
不倫慰謝料は関係者の話し合いによって任意に決めることができますから、請求額をそのまま受け入れることも可能ですが、過去の判例を参考にして適正な金額を算出し、自分の収入でカバーできる範囲内で誠心誠意応えることが大切だと言えます。
また、慰謝料は個々のケースに応じて事情が考慮され決定しますので、不倫の内容や期間等の要素によっては金額が増減します。
増額要素
- 不倫の事実をきっかけに夫婦が離婚する場合
- 夫婦に子がいる場合
- 相手方が受けた精神的ショックが大きくうつ病等を発症している場合
- 不倫が長期間に渡っており相当回数の関係を持っていた場合
- 相手方夫婦の関係を壊し自分との婚姻を意図していた場合
- 不倫を認めず謝罪しない場合
- 不倫女性が妊娠あるいは出産している場合
など
個人では、どういう条件ではいくらが適正金額か、自分に請求された金額は法外ではないか等、判断しにくい面もあるため、弁護士に相談して状況を整理することが非常に大切です。
不倫慰謝料の減額要素
相手方夫婦の状態や不倫の状態によっては、請求された慰謝料額を減額できる可能性が出てきます。
一般的に考慮される事情としては以下が挙げられます。
夫婦関係が別の理由ですでに破綻していた場合
不倫で慰謝料請求されるのは、それによって平和な夫婦関係を壊した損害賠償の意味合いがありますから、相手夫婦の関係がすでに壊れていた場合、不倫による損害ではないことになります。
従って、会話がない、セックスレス等、相手夫婦の関係性が不倫開始時点ですでに破綻していたことを証明できれば、減額の可能性が出てきます。
不倫期間が短期間である場合
不倫関係にあった期間が短く、回数的にも非常に少ない場合、慰謝料減額の要素となることがあります。
夫婦に未成年の子がいない場合
子供の存在は慰謝料請求において重要な要素となりますが、未成年者がいない場合は子に及ぼす影響も小さくなる傾向があるため、減額要素となる場合があります。
時効が過ぎている請求には応じる必要はない
不倫による慰謝料請求は、損害賠償請求と同じ考え方に基づきますので、被害を受けた側が損害の事実を知った時点から3年か、当該行為が発生した時から20年が過ぎた場合は時効となります。
つまり、相手方が不倫の事実と不倫相手である自分の素性を知った時点から3年か、不倫発生から20年を超えて請求された慰謝料については、支払う必要がないことになります。
請求への対処法と弁護士に相談すべき理由
慰謝料請求された場合、自ら直接交渉に臨むか、書面を用意してやり取りを行うか、いずれかの方法で対応することになります。
自力で直接交渉に臨む場合、相手方と顔を合わせるプレッシャーを覚悟しなければなりませんが、互いの意見や主張を直接交換できるため、スムーズにいけば最も早く解決する可能性があります。
ただし、双方が感情的にならず冷静に話し合いができる状態であることが前提になると考えられます。
あるいは、減額を希望する回答書を送付する方法もあり、複数回にわたる書面のやり取りを経て解決に至ることがあります。
精神的負担を軽減できるメリットがありますが、回答書の書き方や適切な減額希望の伝え方がわからない不安点があります。
いずれの方法においても、双方が比較的落ち着いており話し合い可能な精神状態であることや適切な書面を作成できることが前提になります。
一般的には慰謝料請求に関する知識や経験が乏しいことが多いため、できるだけ弁護士に依頼し、できるだけ不利にならない示談書を作成する等の対処ができればなお望ましいと言えます。
自分側で示談書を作成できれば、弁護士が不利な状況を最大限回避するよう配慮してくれますから、相手方に償いつつ自分の負担を過度にしないバランスを保てる可能性が高くなるのです。
突然、慰謝料を請求されれば、その金額を言われるままに支払わなければいけないのか、判断がつきません。
高額な慰謝料だと思っても、実際に法外な金額かもしれませんし、実は適正金額であることも考えられます。
当事務所としても、正しい判断をするためには専門的な見立てが必要であると考えていますので、ぜひ一度ご相談頂くことをお勧めします。