DVやモラハラは配偶者からの暴力行為として法定離婚事由に当たり、慰謝料請求の対象となります。
ただし、配偶者本人は暴力行為を行っている認識が乏しい傾向にあることから、被害者は証拠を確保して客観的にDVやモラハラを証明する必要があります。
ここでは、どのようなものがDVやモラハラを立証できる証拠になるのか、またその集め方についても解説します。
DVを立証するための証拠
肉体的な暴力を指すDVの場合は、受けた怪我や壊された物等を証明できる材料が有効とされています。
DVによる怪我の診断書
暴力を受けて怪我をした場合、病院で診断書を作成してもらえば、それを証拠として使うことができます。
ただし、医師は怪我の状態について記載することはできますが、怪我の原因が配偶者の暴力によること確定するのは困難です。
従って、診断書を補完する材料として、DVを受けた日時と怪我の位置や程度、診察を受けた病院や医師名等、詳細な記録を自ら残しておく必要があります。
怪我の部位や壊された物を撮影した写真
怪我の状態や壊されたり破られたりした物を撮影した写真は、目で見てわかる証拠となるため非常に強力です。
毎日の日記
日記は被害者本人が主体的に書くものであることから、それ単体では証拠として不十分な可能性がありますが、診断書や写真で確認できる出来事を裏付ける情報として役立てることができます。
どのような出来事がいつ起こり、どのような被害を受け、どう感じたのか等、詳細に書き記しておくことが大切です。
配偶者からのメール文
DV加害者の特徴の一つとして、気持ちが落ち着いている時に自分の暴力を反省し、一時的に優しくなり謝罪してくることがあります。
この謝罪メールに暴力の事実が記載されていれば、DVを立証する証拠として活用できる場合があります。
モラハラを立証するための証拠
モラハラは言葉や態度による精神的暴力であるため、視覚的な証拠を残しにくい難しさがあります。
従って、証拠を確保するには以下のような工夫が必要になります。
言動によるモラハラ
言葉の記録は音声として残すのが一番ですから、相手と一緒にいる時間帯にICレコーダーを設置し、いつでも相手の言葉を記録できるようにしておきます。
また、精神的に追い詰められてうつ病等を発した場合、医師にモラハラの現状やそれによりどう思い詰めてきたかをしっかり話すことも大切です。
精神科の医師の場合、患者がどのような環境におりどのような点で精神的に辛い思いをしているか、診察内容としてカルテに記載しますので、詳細に話しておくことで後に証拠として活用できる可能性が出てきます。
メールによるモラハラ
昨今はメールやSNSを使って連絡を取り合うことも多いため、文章でモラハラ行為に及ぶケースが多々見られます。
しかし、証拠として考えれば、加害行為がしっかりと記録された材料を確保できるメリットもあるため、履歴を残しておくことが大事です。
経済的DVを立証するための証拠
夫婦は協力して生活していく義務を持ちますが、配偶者から生活費を渡されず、仕事をして収入を得ることも許されないような状態を経済的DVと呼びます。
配偶者の収入が十分であるにも関わらず金銭的に不自由し、金銭管理を任せてもらえないこともあり、また自分だけが自由にお金を使い、相手を家に閉じ込めておくケースも見られます。
お金を要求しても「お前には金銭管理はできないからお金を渡すことはできない」等、人格否定に当たるような侮辱を受けることもあるため、モラハラと重複する部分があるのも特徴的です。
このような場合、モラハラと同様に会話内容を録音したり、通帳のコピーを取って収入減を記録したり、自分が受けた行為を日記に詳しく書き記したりしておくと、証拠として活用できる可能性が出てきます。
音声や動画で証拠を取る場合の注意点
DVの場合、暴力行為をこっそり撮影して証拠にしようとする場合、配偶者の同意を得ない違法な隠し撮りに該当するとされることがありますが、個々の事案によっては立証能力があるとして、証拠採用される場合もあります。
一方、配偶者から受けた言葉の暴力については、相手はこちらに暴言を聞かせる意図を持って話しているため、それほど深刻な配偶者のプライバシー侵害に当たらないと判断されるケースが多いようです。
いずれの証拠収集方法においても、苦労して確保した音声や動画が違法と判断されたり証拠として無効扱いされたりしないよう、予め弁護士に相談しておくことが、後に自分自身を守ることにも繋がってくるのです。
これ以上追い詰められないために速やかに弁護士までご相談を
DVの場合は深刻になると命の危険を伴うケースもありますので、ぜひ速やかに弁護士やシェルターに連絡することをお勧めします。
当事務所としてもご相談をお受けしており、一人で抱えておられたDVまたはモラハラの問題について、しっかりとお話を伺い対策を講じます。
また、DV問題に特に強い弁護士との連携があるため、必要に応じてご紹介も行っております。
配偶者からの暴力は、精神的に危険なほど追い詰められる傾向があるため、勇気を持ってできるだけ早くご相談ください。